現実が虚構のあとを追う トランプ前大統領の「選挙は盗まれた」「議事堂に行って、勇敢な議員を励まそう」との演説に扇動され、アメリカ連邦議会議事堂を占拠した熱狂的なトランプ支持者たちは、Qアノンなる陰謀論を信じているという。Qアノンは、「アメリカはディープステイト(闇の政府)に支配されており、トランプはそれと闘っている」とする。 じつは、この衝撃的な事件を一年以上前に予言していた映画がある。それが、二〇一九年に公開された『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督、ホアキン・フェニックス主演)だ。この映画が世界じゅうで賛否両論を巻き起こしたのは、バットマンの最大の敵で、「悪」の象徴であるジョーカーを白人の「下級国民」として描いたからだ。 『ジョーカー』の主人公アーサー・フレックは三十代と思しき白人男性で、スタンダップコメディアンを目指しながらも、閉店セールの宣伝で道化役をするくらいしか仕事がない。