「葬式なんて残された人たちのためのお祭りじゃん、っていつも白けた気持ちでいたけど、あんなの可愛いもんだったよね」 清潔な病室でニナはため息をついた。どんなに医療が発展しても、人間は死ぬ時は死ぬ。若くても、才能があっても、どんなに愛されていようとも。 あと数ヶ月でニナの人生が終わる。けど人格はデータに残る。生前の脳の情報をコンピューターに転送するマインド・アップロードは、今や一般的な技術となっていた。 電子端末からコールすれば、生きている人はいつでもニナと会話ができる。体感的にはテレビ電話と変わらない。愛媛のニナの母親と東京に住む夫のマサノリさん、各々と同時に話すことさえ可能になるから、むしろ今より繋がりやすくなるとも言える。 あくまで死者との対話はシュミレーションで、機械が死者の人格を再現しているにすぎない。けれど、大切な人の容姿や記憶を引き継いで、泣いたり笑ったりする彼らをただのデータと