人名用漢字の新字旧字の読者から、高島俊男の『芭蕉のガールフレンド』(文藝春秋, 2005年2月)を読むように、との指摘があった。読んでみたのだが、「法務省出血大サービス」(pp.217-221)の項は、あまりに調査不足で頭が痛くなった。 この法務省というのがバカの集合で、昭和二十三年の戸籍法で「命名に用いる字は常用平易な字に限る。常用平易な字とは当用漢字である」ときめたものだから、この前申したごとく、「正彦」「弘子」程度の名前すら「常用平易でない」と戸籍窓口で拒絶されることになってしまった。これには国民の不満ゴウゴウであったので法務省は、「じゃちょっとだけまけてやろう」と、昭和二十六年に名前にのみ用いてよい漢字九十二字を認めた。これが「人名用漢字」のはじまりである。