さて、筆者のわたしもしばらく忘れていたのだが、この連載はサブタイトルに「吹きだしで考えるマンガ論」とあるように、マンガの「吹きだし」のことを考えるために始めたのだった。そこで、このあたりで少し、吹きだしについて基本的な問題を扱うことにしよう。 マンガの吹きだしを読むとき、わたしたちは意識するしないにかかわらず、おおよそ次のことを判断しながら読み進めている。 ・その吹きだしは誰の声か?(帰属の問題) ・その吹きだしは誰に宛てられた声か?(宛先の問題) 「帰属」「宛先」と並べると、なんだかいかめしいけれど、これらはじっさいのところ「問題」というほどのことだろうか? そんな小難しいことを言わなくても、わたしたちは何の問題もなく、どの吹きだしが誰の声か、それが誰に向けられているかすらすら理解できているのではないか? それに、マンガには吹きだしの声が誰のものかを判断する手がかりがいくつもある。たとえ
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