単なる音楽映画かと油断していた。映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、フレディ・マーキューリーという稀代の表現者の、鮮烈な生き様を描いた素晴らしいヒューマン・ストーリーだった。このようにあえてステレオタイプな書き方をして、いささか含羞を感じている筆者なのだが、そんなへそ曲がりでさえ、シンプルに感動を覚えるのが、この作品だ。 フレディ・マーキュリーが活躍していたクイーンというバンドを、実は、あまり熱心に聴いた人間ではない。1973年にデビューした彼らは当初、日本では「ビジュアル系のバンド」として受け止められていた。ある音楽専門誌のレビューで、3枚目のアルバム「シアー・ハート・アタック」が、異様に低い点数で評価されていたのを思い出す。 煩いロックファンの間でも、「リズムがなっていない」とか、「あれはロックではない」とか、かなり辛辣な声も多く聞かれた。ただ、「ミュージック・ライフ」誌だけは、彼らを全