負けたくない、つらくても前に進もう。その気持ちはどこからやってくるのか? 「褒めて伸ばす」が主流の現代において、矢内理絵子・将棋女流名人の精進の仕方は異例だったかもしれない。厳しい父が考えた「目的地」とは――。前回に引き続き、お話を伺った。 (取材・文/佐保 圭、写真/川本聖哉) 叱られたくない一心でがんばった少女時代 ――将棋は何歳で始められたのですか? 矢内: 小学校3年生、8歳のときです。父が簡単な駒の動かし方とルールを教えてくれました。そのあと近所のデパートで初心者用の詰め将棋の本を買ってきて「これを解いてみなさい」って。実際に駒を並べて「じゃあ、一局」という形ではなく、問題集でパズルを解く感覚で将棋を始めたんです。 矢内理絵子(やうち りえこ)。1980年生まれ、1990年女流育成会入会。1993年13歳で女流2級プロ棋士となる。2006年2月女流名人位獲得、現在まで3連覇。20