「何か焦る」 3日前の夜、くろさんがぽつりと言った。 表情があまり変わらない彼だが、陰りがあったのは分かった。 一昨日の朝、くろさんが起きてタバコを吸っているとき、じわじわと涙が浮かんでいたのを見た。何度も目元を拭う横顔に、「仕事、行きたくないの?」と聞いたら「うん」とだけ答えた。その日、「仕事に行く。やることが沢山ある」という言葉を遮って、仕事を休ませた。 その晩、二人で引越しの話をした。 「もっと田舎に行って、二人でのんびりと暮らしたいね。無理しない程度に仕事をしてさ」 くろさんが泣かなくていいように、悩まなくていいように、そんな風に生きていきたいと思った。私も泣いたし、くろさんも泣いていた。 昨日の朝、朝ごはんを食べながらくろさんはまたじわじわ涙を流した。「そんなんじゃ仕事に行かせられない」と仕事を休ませた。 昼頃にくろさんの実家に行った。お義母さんがいた。くろさんがお義母さんに事情