作家の田中慎弥さんが連作小説集『ひよこ太陽』(新潮社)を刊行した。東京で暮らす作家が執筆に行き詰まってもがく姿は、自身をモデルにした「私小説」風だ。田中さんは「自分のことを書いてみることで、作家として小説を書くということはどういうことなのか、改めて考えたかったんでしょう」と執筆の動機を話す。 ■ ■ 7編の連作。いずれも語り手は長い実家生活を経て上京した作家の男性、田中さん自身のようだ。40代で独身、日々の執筆が進まない。一方で幻覚のような白い帽子の少年の描写や、女性が出て行ってしまったおぼろげな記憶も出てくる。そんな日常の中、行方不明になった間接的な知人を名乗った手紙が届く。