2010.05.17 書評・創造への繋がり 13 『リアルであること』 /評者 深澤直人(デザイナー) 『リアルであること』 中沢新一 著(幻冬舎文庫・440円) 評者 深澤直人(デザイナー) 「デザイナーはきゅうりの生の味を知らず、確かめる勇気を失った」 かねてから人間の見ているものが幻想なのではないかという思いがあった。リアリティを見出せないのではないかと。リアリティを見失しなわせるのは、倫理や常識や思い込みであるが、それとは別にリアルを感じつつも一方でそれを正視することを妨げる何かがデザインという世界を取り巻いているのではないかと感じ始めていた。生産側の言う「魅力づくり」は「脚色」で、デザインはその理由付けの片棒をかついできたが、理由付けは時とともに矛盾を産んだ。デザイナーはきゅうりの生の味を知らないまま、味付けをすることがデザインであると学び、生の味を確かめる勇気を失った。 人