(平太郎を掴む大きな鬼の手) (権八の蚊帳の外を歩き回る一つ目童子) 新日本古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 扨《さて》、百物語せし後も何事も無く過ぎしが、「其の術《わざ》有れば、其の印《しるし》有りける」にや、六月も過ぎ、七月朔日の夜、平太郎権八が両家に、また類《たぐひ》無き化け物来たりける。 平太郎が宅に出でしハ、其の形定かに見えざれども、小山とも思《おぼ》しき程、鬼の如くなる者、眼《まなこ》は一ッにて、其の光、表の方より写りける程に、平太郎臥したる側《そば》なる障子《しやうじ》、火の輝くが如くにて、平太郎も驚き、「然《さ》らば、實証《じつしやう》を見ばや」と障子を開かんとせしに、少しも開かず。 猶《なほ》、押し開けんとセし内に、障子引き裂け、大いなる