夏葉社 2016.7(筑摩書房 1988.4を底本に復刊) 日野市立図書館は、1965年9月21日、1台の移動図書館の巡回から図書館サービスを始めました。巡回先では、「簡単な手続きで、その場で本が借りられます。利用はすべて無料です」と懸命に呼びかけていました。その頃の日本の図書館は、だれでも気軽に本を借りることができるものではなかったからです。図書館とは受験生に席貸しをするための建物であり、本はとても少なく、新しい本はあまりなく、市民に「良い本」を読ませるよう指導することが役割だと思われていたようです。 初代館長の前川は、1台の移動図書館車にすべてを賭け、図書館の本来の役割をはっきりと見せることにしました。図書館とは、建物のことではなく、市民一人ひとりが求める資料を提供するシステムそのものである-市民への本の貸出し、そこにない本でもリクエストを受け付け、蔵書になければ購入し、購入できなけれ