正論8月号に野口健の手記が掲載されました。以下、全文です。 「英霊に愧じぬ遺骨収集の道を求めて」 アルピニスト野口健 なぜ、遺骨収集を始めたのか 「生きていて申し訳ない」―。 かつて祖父が、幼かった私に繰り返し語った言葉だ。祖父は職業軍人であり、ビルマ作戦に参謀として加わっていた。終戦により捕虜となり生還を果たしたが、その心は、ビルマに眠る兵士のもとに残しているかのようだった。 「おじいちゃんは生きて帰ってきたけれど、部下の大半が死んでしまった。ほとんどが餓死か病死だった。イギリス軍に追われてね。ジャングルの中を食料もなくひたすら逃げるんだ。まともに食べていないから体力のない兵士は歩けなくなる。最後は自決用の手榴弾を渡さなければならなくて…。自分の兵士を死なさなければならない。それが一番辛かった」 「洞窟の中に潜んでいた時、兵士の一人がシクシクと泣いているんだ。『どうしたんだ』と聞くと、彼