デフレ反転の成長戦略 [著]山田久[掲載]2010年9月5日[評者]加藤出(エコノミスト)■韓国は選択と集中で賃上げ デフレ克服の処方箋(しょほうせん)を考える上で、非常に重要な論点を提示してくれるのが本書である。 デフレからの脱却には「事業再編よりも人件費カットによるコスト削減を優先する日本企業の行動様式を転換することが条件」と本書は主張する。「一国の平均賃金が持続的にマイナスに陥るまで人件費の抑制を行うのは日本だけ」であり、その結果、「低価格競争→人件費削減→低価格志向化→低価格競争→……」という連鎖が起きている。 2004〜07年に企業業績が大幅に改善したものの、賃金は引き上げられなかったことも、「現下のデフレに影響している」。韓国はわが国と同様にアジアの低賃金諸国との競争にさらされてきたが、供給過剰解消のため産業の選択と集中を進め、賃金を増加させてきた。このため、デフレを回避できて