novelcluster.hatenablog.jp * タイトル『魂の後味』 4,844 / 5,000字 * 葉太郎さんは、私を六花という名ではなく、お雪さんと呼んだ。 「六花、って雪の結晶のことなんでしょ? お雪さんって呼んでいい?」 その古めかしい響きはなんだか素敵だと思ったし、そんなことを言う人も、同様に素敵だと思った。私は葉太郎さんのことを知りたくなって、思い切って食事に誘った。葉太郎さんは金目鯛の煮付けを口に運ぶと、眉間に皺を寄せ、遠大な悩みでもあるかのような顔をして咀嚼を続けた。怒ってるの? と私が聞くと、「ああ、怒ってるんじゃなくて真面目になってんの。美味しいものを食べてると、なんでか本気になっちゃってさあ。もう必死で味わってんだ」と言って、葉太郎さんはエヘエヘと笑った。 食事を終えたあと、近くに小さな動物園があったのでそこに行った。葉太郎さんはハシビロコウの檻を見つける