『バチッ』という音とともに、この家じゅうの光が消えたことが分かった。停電が起きたのだ。 夜になったけれど、今日は1日中、朝なのか真昼間なのか分からないようなどんよりとした天気だったらしい。雨がわんわんと泣くように降り続けていた。けれども家の中ではそれほど湿気は感じなかった。台風が近づいていることは分かっていたので、朝から部屋中全ての雨戸が父の手によって閉められていた。バチバチと大粒の雨が雨戸を打ち付ける音がする。家の前にはそれほど大きくない川が流れていて、普段はブラックバスか鯉のような魚が泳いでいるのを見ることができるらしい。川はきっと水位を増しているに違いない。彼らはどうしているのだろうか、流れの穏やかな場所に避難でもしているのだろうか。 わたしは温まり始めたシチューのにおいを感じていた。母が夕飯に作っていたものだった。わたしは今キッチンの傍のダイニングルームに座っている。シチューは母の