本作は中矢が2005年から10年にわたり撮影してきたシリーズです。 この広大な土地で猫に遭遇するのは偶然か、それとも必然か。街を歩き、立ち留まり、待つ。そしてカメラに収める。中矢はそんなことを長い間続けてきた。 最初は寄った。ある時、いや、違うなと思いそれからは離れた。 どんどん離れていった。 居そうな所には何年も通い、通り道を調べ、釣り人のように待つこともあった。 そして10年が過ぎた。----中矢昌行 自宅のバルコニーから外の世界へ踏み出すと、見慣れた街の風景が徐々に別の貌に変わってゆく。 公園の裏側にある坂道。 馴染客が通うゴールデン街の裏道。 雑草が生い茂る堤防。 Y字路の分岐点。 賑やかな温泉街。 都会の中に潜む墓地。 人の気配のない通り道。 そんな風景の片隅に猫が居る。 猫は時に昼寝をし、散歩をし、何かを追いかける。 私たちに凛とした姿を見せた瞬間、その身を隠そうとする。かと思