他のソフトウエア分野についてはわからないが、売掛・買掛・在庫・原価といった会計要素を統合的に管理するためのしくみ(基幹システム)の開発については、はっきり言えることがある。ウォーターフォール手法(WF)に替わるやり方としてアジャイル手法を導入しても、それが「スクラッチ開発(いちいちゼロからシステムを作るやり方)」である限り、状況はたいして変わらない(もっと悲惨なことにならなければ幸運というものだ)。 基幹システムの開発に関して、アジャイル手法に救いを求めようとする人たちの初歩的な勘違いが「WF元凶論」である。これまでの開発プロジェクトがなかなかうまくいかなかったのは、やり方が悪いからだ――そこまでの観察はおおむね正しい。しかし、そこからWFこそが元凶と断ずるのは短絡である。 それは、今にも崩れそうな石橋を前にして「<石橋を叩いて壊す>ような慎重でおおげさな渡り方はやめて、軽やかにスキップし