6月25日 「もしもし。先日そちらで靴を購入した者ですが、箱に左足が2つ入っていまして……」 この日、午前9時過ぎには家を出ないといけなかった。朝食の片づけをしながらなにを着て行こうか考える。そうだ、靴はあれをおろそう。5月中旬にもとめて、箱のまま物入れに仕舞いっぱなしだった靴を思い出した。 身支度をすませ、箱から玄関のたたきに靴を置いたそのときだ。 んっ?なんだか並びかたが気持ち悪い。形状が左右対象でないような……。なにかがおかしいと思いつつ右足を入れてやっと確信する。両方とも左足だ。 左足が2つ並んだ靴を見て、いくらのっぺりとした表情のない靴だとしても、靴屋のまちがいを疑わず自らの錯覚を疑うのだから、我ながらおかしい。 慌てて履きなれた靴に足を入れ玄関を出る。 夕方帰宅してから冒頭の電話と相成り、交換の手はずをとる。 6月26日 左右揃った靴と交換完了。店の若い女性が申し訳なさそうに詫