武漢というか河北省出身の、まあ部下と言える人がいる。彼に「大変だね」とか「ご家族大丈夫?」とか声をかけるべきか。 普段から業務以外ではあまり濃密なコミュニケーションを取らず、昭和的な飲み会は敢えて避けてきたし、プライベートはさほど口にしないようにしてきた。この異国の地で彼は淡々とキャリアを積み、成果を出してきた。 だからいま、ことさら、いやことさらな事態になりつつあるけれど、ことさら声をかけると、逆に違和感があったりするのではないか。 ねぎらうべきか、心配すべきか、それともいつもどおり接し続けるべきか。 彼と同じような境遇の人は日本の中だけでも何百何千といるだろう。逆に、震災と避難のときに彼と同じような境遇となった日本人も多かっただろう。 人は、社会は、どう支え合うべきか。午前中、自分の向かいの席で黙々と仕事をこなしていた彼を見て思い、迷った。