京都アニメーション放火殺人事件の報道に対する批判では、「実名を希望する人だけ書けばいい」「匿名希望している人の思いをなぜ尊重できないのか」との意見も多かった。取材する立場としては、警察が遺族から実名匿名の意向をどう聴取しているかが不透明で、安易に警察任せにはできないと従来から考えてきた。京アニ事件では、警察が前例をみない遺族の意向聴取を行った。その経過を振り返る。 【写真】京アニ犠牲者が母校に残した卒業作品 8月2日午後3時、京アニ事件で発表があると京都府警が告知すると、続々と記者たちが府警の施設に集まった。事件発生から2週間、被害者氏名の発表を警察は先送りしていた。 京都府警の幹部らは、集まった記者たちに向かって、犠牲者の名前を読み上げた。その中には人気アニメ「涼宮ハルヒの消失」の監督や「響け!ユーフォニアム」の作画監督、アニメ作りを夢見て入社したばかりの女性も含まれていた。時計を見ると