日本人が「自分たちは特別だ」と思っていることはよく知られています。そしてこれは、理由のないことではありません。 なんといっても、20世紀前半までは、欧米以外で近代化に成功した国は日本しかありませんでした。これは歴史的に見てもきわめて特異な現象ですから、そこにはなにか特別な理由があるはずだ、と誰もが考えます。 福沢諭吉の「脱亜入欧」以来、「日本はアジアでは別格だ」という優越感と、「先進国では唯一の黄色人種」という劣等意識が日本人を深くとらえていました。しかし1970年代に「四匹の龍(韓国・台湾・香港・シンガポール)」の経済成長が始まり、東南アジアがそれにつづき、冷戦の終焉によって中国やインドが市場経済に舵を切ると、アジアは急速に「近代化」していきます。いまでは、「アジアには市場経済や資本主義を受け入れる土壌がもともとあって、そのなかで日本は、地理的・歴史的な偶然からもっとも早く近代に適応でき