濃厚鶏そばの人気店として知られている『晴壱』は、東京のラーメン店において際立つインパクトがあるわけではない。しかし、それをマイナスにとらえるのは早計だ。それこそ、他店が真似できない芸術と職人の域。 濃厚は濃厚でも、静かなる濃厚。たとえるならば、誰もいない、風も吹かない、波もない、キーーンという無音のなかにある湖。テーブルに出された濃厚鶏白湯そばは、まさに波のない湖のような、自然の芸術を織りなしている。 ・新たな感覚に訴えかける「鶏の濃さ」 スープを飲めば、限りなく優しい「上質の濃さ」だけがそこにあるのを感じる。濃さと喉ごしは味覚で感じるものだと思っていたが、新たな感覚に訴えかける「鶏の濃さ」だけを残したスープになっている。 人はラーメンの濃厚さにガッツリとした味の濃さを求めがちなので、優しすぎると感じる人がいるかもしれない。しかし、その優しさがいい。味の濃さではなく、鶏の濃さがそこにある。