中国映画界から現れた新鋭賈樟柯(ジャ・ジャンクー)。彼の長編デビュー作である『一瞬の夢』の魅力は、まず何よりも今日の中国社会を見つめる現実性と映画的な創造性の高度な融合にあるといえる。 この作品では、開放政策によって急激に変化する社会がドキュメンタリー的な視点でとらえられていると同時に、人物の感情や心理が独自の映像表現で鋭く掘り下げられ、 個人の在り方に対する覚醒をうながす鮮烈なドラマにもなっている。そんな作品に接して筆者がまず興味をそそられるのは、賈樟柯がどのような模索を経て、 このふたつの要素が自然なかたちで融合するスタイルにたどり着いたのかということだ。 70年、山西省・汾陽生まれの賈樟柯は、陳凱歌(チェン・カイコー)監督の『黄色い大地』を観て衝撃を受け、映画を志すようになったという。 それはあくまできっかけであり、『黄色い大地』と彼の長編デビュー作のスタイルがまったく違っていても何