(前回から読む) ―― 今の10代の子たちを中心に、若い人には「夢のようなスゴイものを、努力をしないで獲得できる」という思い込みがあるとのことでしたが、どうしてそうなってきたのだと思いますか。 谷口: 理由は大ざっぱには存在しているんですよ。例えば少年漫画を読むと分かると思うんですけど、時代が下るにつれて、主人公はどんどん努力をしなくなっていくんです。もしくは主人公は、努力は漫画では見えないところで済ましたという話にしておいて、漫画のコマには出てこないようになっているんです。 ―― 「努力」に対する価値が減ったということですか。 読者が、「努力によって何かを勝ち取る」という“物語”に夢を見なくなったんじゃないですか。 「巨人の星」(1966)がブームになった頃は、まだ努力に夢があったはずなんですよ。星飛雄馬は、大リーグボール養成ギプスをしてウサギ跳びをして苦労をすれば、長屋生活から脱却して