新しいビジネスモデルを誰がどう作るのか? 増田 問題は、やはり先ほどの企業体力の話になるのでは。ハリウッドメジャーであれば、海外市場も自分たちのコントロール下に置けるほどの体力があります。 しかし、海外のディストリビューターに頼らざるを得ない日本のプレイヤーはそういうわけにいかない。海外での事業が当たり前になっている時代にそういう状況では、新しいビジネスモデルを作るのは非常に難しい。 それならと思って世界への直接配信事業に進出しようと思っても、ライセンス済みの過去の作品をいきなりディストリビューターから引きはがすこともできません。一歩間違えると、まるっきり無駄になるプラットフォームとなってしまいますから――資本・先見性・ビジネスの構築力、そして度胸がないと※。 2006年をピークとする海外での日本アニメブームは、振り返ると「韓流ブーム」に近いものがあったと思います。アニメのポケモンはゲーム
2つの危機が同時に進行している ―― ここまでのお話を整理しますと、「海外でも人気が高いのに海賊版を取り締まれずマネタイズできていない」「日本が得意とする2Dアニメから、フル3Dアニメに海外のトレンドは移りつつある」という2つの危機があるということになりますね。 増田 アニメだけでなく、マンガの需要も徐々に下がっています。実写作品は元々海外には出ていませんから、トータルで考えても「コンテンツ立国」という看板はかなり厳しくなっている、というのが素直な認識ですね。 ―― なんとか、2Dアニメが海外のコアなファンの人気を集めているうちに、ビジネスモデルを打ち立てたいところです。 増田 東映アニメーションさんをはじめ、個別には様々なチャレンジがありますが、業界全体としては動けていないのが現状です。 先ほど「テレビはやはり重要」と話しましたが、本来は海外へサイマル配信するのが最も効果的です。 一部そ
世界展開に最適なのはネットじゃない。テレビだ ―― 最近では海外のディストリビューターでさえ取り締まりを十分に行なうことは難しいことを改めて認識させられる事例がありました(「フラクタル」の海外配信の許諾取り消し通告:アニメ!アニメ!など)。業界全体で取り組むべきでは? 増田 業界全体が取り組んだとしても、経済規模的にやはり十分な効力が及ぶような動きにはならないですね。海賊版への対抗策というと、ネット配信をイメージしがちですが、たとえばディズニーでもインタラクティブ部門(配信などのネット関連部門)の売上は全体の2%程度です。 ディズニーなどハリウッドメジャーの海外事業の中心はテレビ事業なんです。映画の配給網はもちろんですが、世界100ヵ国以上に放送チェーンを持っていることが強みになっています。 まつもとさんの著書の中で、ニコニコ動画の番組制作について夏野剛さんにインタビューしていましたよね(
海外販売の売上はピーク時の半分に ―― ネット上でも「アニメが儲かっていない」ことに対してユーザーからの関心も高まっています。当然、「ネットで売上を増やして、クリエイターにもっと還元されるべきだ」という意見も聞かれるわけですが。本来はこれだけ海外でも人気があるわけですから、やはり海外での売上がもっと増えなくてはいけないはずですね。 増田 「日本のアニメの人気は高まっています。ところが皮肉なことに売上は下がり続けており、その打開策が見つからない」というのが矛盾した現実ですね。 アニメの海外展開の成功事例としてよく挙げられる「ポケットモンスター」(ポケモン)は、世界百数十ヵ国、つまり国連に加盟している国々のほとんどで放送されており、2000年代前半にとてつもない売上を記録しました。 ところが、世界的に見て日本のアニメで現在一番人気のあるのは「NARUTO」ですが、その人気の割には高い利益が得ら
アニメーションの業界団体である、日本動画協会のデータベースワーキンググループがまとめたものだ。動画協会加盟団体の売上推移をまとめたこのグラフからいくつかの傾向を読み取ることができた。 ビデオグラム売上の落ち込みが激しい 一方、劇場の売上は伸びている 商品化や配信の売上も伸びている しかしそれらの伸びは、全体の落ち込みを補うには至っていない 劇場・配信の売上が伸びているにも関わらず、全体の売上は落ち込んでいること、そしてその傾向は海外販売でより顕著に表れていることも別のデータで示されている。 今回はこのデータをまとめた増田弘道氏に話を聞く。増田氏は、1979年にキティレコード入社後、アニメ・出版に携わり、2000年にはマッドハウスの代表に就任、現在は動画配信を主な事業とするフロントメディアの取締役である。 氏が座長を務める日本動画協会データベースワーキンググループは、先月、「アニメ産業レポー
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