暑くて寒くて、段ボール処理の音にまみれた部屋 穐田が社外取締役としてカカクコムに入社したのは、創業者の槙野光昭が価格入力システムを導入した後のことだった。 穐田が初めて社外取締役として浅草橋にあったカカクコムに出かけた日の朝のことだ。小さなビルにあった事務所に着いたら、隣のビルの入り口には段ボールを積んだリアカーを引くランニングシャツ姿の人たちが並んでいた。「何事か」と思ったら、隣のビルは段ボールの中間処理会社だった。 段ボールを持っていくと、買い取ってくれたのである。のちにカカクコムは水道橋のビルへ移る。だが、それまでの間、穐田が出勤する時はリアカーを引いた人たちと一緒だったのである。 そしてカカクコムの事務所は暑かった。事務所にはデスクと一緒に大型のサーバーがあり、絶えず熱を発していた。その当時、レンタルサーバーというものはなく、自社で買わなくてはならなかった。小さな事務所だったのでサ