虐待する父母から子供を守る手段とされながら、長年、行政による救済にほとんど用いられてこなかった民法の親権喪失制度。これを見直す改正民法が27日成立した。虐待する親と子に長年向き合ってきた施設の現場からは、歓迎と共に課題を指摘する声も上がる。 「親権停止の仕組みは前進だが、もっと前からあれば救われた子供も多かった」。こう話す東日本の児童養護施設長は、過去に何度か親権喪失ができないか検討し、見送ったことがある。 入所児だった20代前半の知的障害の男性が中学生の時。それまでほとんど会いに来なかった父親がやってきて尋ねた。「障害年金は出ていないんですか」。男性は3歳までに3度、親の虐待によるとみられる脳挫傷の手術をし、後遺障害が残った。父親が引き取りたいとも伝えたため、「金目当てだ」と親権喪失の検討を始めた。障害年金が成人前で未支給と知った父親からの連絡が途絶えたため、立ち消えとなった。男性は18