2010/8/80:0 福祉国家に対する冷静な視線――福祉レジーム論とジェンダー(1) 筒井淳也 ◇注目を集める「北欧型福祉」◇ 長い不況が続き、貧困から抜け出せない人びとがメディアに映し出されるなか、日本でもかつてないほど福祉や政府の役割に人びとが注目するようになった。ネット上では経済学者らが金融政策・成長戦略について議論を戦わせているのが目立つ。また、普段ネット上の議論に目を向けない人びとについても、最近になってデフレ、したがって金融政策がひとつの争点であることが徐々に認知されてきた向きもある。 他方、不況と並んで日本の将来に不確実性の影をおとしているのが、かつてどの国家も経験したことのない段階に達しつつある少子高齢化である。日本の出生率は独伊と並んで先進国最低レベルにまで落ち込んでいる。他方、先進国でも比較的高い出生率を維持している国もあり、北欧諸国はそのグループに入っている。