ミエちゃんが俺とつきあえるとか思ってたらどうしようと彼は言い、本人に訊けばいいじゃんと私はこたる。彼は眉を歪め、野菜を鍋に放りこむ動作と同じ速度で言葉を投げる。マキノってなんでそんなに言語コミュニケーションを信じきってるわけ、この世がそんなに簡単にできてるわけないだろ、あの子たち返事しないでさめざめと泣くからね、しつこく泣く、俺はムツゴロウさんみたくひたすらなだめる、そして夜が明ける。あれはきつい。 なるほどと私は言い、長い箸を動かして鍋底から奇妙なかたちのきのこを救出する。中国人の店員さんが美味しいですよと言っていた。鍋は曲線で仕切られ、赤白二色のスープに大量のスパイスが浮き沈みしている。 薬膳っぽいもの食べようと彼が言い、私たちはここに来たのだった。繁華街の奥のこのあたりでは深夜まで平然と食事が供され、周囲のことばの半分が日本語でない。 ミエちゃんは彼の同僚だ。美人じゃないけどなかなか