2013年5月1日のブックマーク (2件)

  • 恋愛的疑惑と少量の善良 - 傘をひらいて、空を

    ミエちゃんが俺とつきあえるとか思ってたらどうしようと彼は言い、人に訊けばいいじゃんと私はこたる。彼は眉を歪め、野菜を鍋に放りこむ動作と同じ速度で言葉を投げる。マキノってなんでそんなに言語コミュニケーションを信じきってるわけ、この世がそんなに簡単にできてるわけないだろ、あの子たち返事しないでさめざめと泣くからね、しつこく泣く、俺はムツゴロウさんみたくひたすらなだめる、そして夜が明ける。あれはきつい。 なるほどと私は言い、長い箸を動かして鍋底から奇妙なかたちのきのこを救出する。中国人の店員さんが美味しいですよと言っていた。鍋は曲線で仕切られ、赤白二色のスープに大量のスパイスが浮き沈みしている。 薬膳っぽいものべようと彼が言い、私たちはここに来たのだった。繁華街の奥のこのあたりでは深夜まで平然と事が供され、周囲のことばの半分が日語でない。 ミエちゃんは彼の同僚だ。美人じゃないけどなかなか

    恋愛的疑惑と少量の善良 - 傘をひらいて、空を
    kaoru_sake
    kaoru_sake 2013/05/01
    「私はときに卑しいおこないを為し、そうして自分や相手の卑しさをつくづくと眺め、なるべく正確に記述する。」
  • プレパラート・テスティング - 傘をひらいて、空を

    さっきまでグラスだったものを、彼は見る。代わりを買いに行くのが面倒だと思う。それが自分の手を滑りおちた原因を、彼は把握していない。彼のてのひらの感覚はどこか遠く、それは今にはじまったことではない。のろのろと彼は破片を集める。紙の袋に入れる。あっと声をあげて反射的にガラスの破片の散らばった場所と反対の側にからだを落とす。左足に刺さった破片を、舌打ちして抜いた。いまいましかった。絆創膏なんか持っていなかった。片足で歩いているつもりでよろけて、床に血の跡がついた。もう一度舌打ちをして、怪我の処置のための商品が置いてあるコンビニエンスストアを思いうかべた。それはとても遠いもののように思われた。そこにたどり着くことはとうていできない、無茶な相談みたいな気がした。足にタオルを巻いて彼は、泥のように眠った。 そんなわけで腫れちゃったんだと彼は話す。めんどくさくてさあ。今朝コンビニでマキロンと絆創膏のでか

    プレパラート・テスティング - 傘をひらいて、空を