阪神淡路大震災について一貫してテーマにしてきた経済学者の実証ベースの本。僕も林氏の書いたものは、自分の発言のベースとして利用させてもらってきただけにこの新書の発表は嬉しい。ただ多くの部分は、阪神淡路大震災に関してすでに発表してきた論文・報告書に加筆修正したものからなる。また本書の前半は、阪神淡路大震災を契機にしてどのように法制度が変化してきたか、そして現状ではどのような法制度が重要なものかの基本的な災害対応の説明が詳細に書かれていて、たぶんかなり読み手のハードルを高くしてしまっている。もちろん実際に政策ベースで考えるとこの日本の災害関係の法制度をよく知っておかないとまずいのでそれはそれで貴重な貢献になっている。 とりあえず、この本でいま僕の一番の関心は最後部にある第11章と12章である。僕は今回の大震災に関連する被害額の推計については、林氏のものを支持してきた(直接的な人的被害を含めた約3