古人口学は、古人骨に基づき過去における人口現象(死亡率、性年齢構成など)を復元することを目的とします。従来の縄文人骨の研究では、 15歳時の平均余命は約16年で、65歳以上の高齢個体が全くありませんでした。しかし、人骨の死亡年齢の推定方法が信頼に足るものであったのか、また、人骨標本がその時代の人々の人口構成を反映しているのか、問題点がありました。狩猟採集民の民族学的調査の結果や宗門改帳に記録された江戸時代人など、近代以前の社会で高齢個体が皆無という集団は存在しないからです。また、従来の古人口学的研究では、高齢者の年齢を若く見積もるため、その割合が過小評価されるという批判がありました。 縄文人が何歳で死亡していたかを解明するために、ベイズ推定に基づいて縄文人骨の死亡年齢分布を求めました。ベイズ推定は、あらかじめ分かっている情報に基づいて未知のデータを分析する方法です。観察したのは骨盤の関節の