スゴイ!でも絶版! 夢と歴史(=物語)をテーマにした壮大な実験的な小説である。 本書にはオージュ公爵とシドロランという二人の主人公がいる。 シドロランのほうは現代(と言っても1960年代)のパリらしきところで、河船に乗って暮らしている。 一方、オージュ公爵はしゃべる馬を引き連れて、始めは13世紀、15世紀、17世紀とどんどん時間旅行をしつつ最後は現代にたどり着く。何を言っているかわからないと思うが、読んでいるこっちもわけがわからない。別にタイムスリップなどというギミックが用意されているわけでもなく、なんの説明もなしに時間軸を飛び越えてゆくのである。 二人の関係は胡蝶の夢形式になっていて、片一方が眠るともう片一方が目覚めて語り出すという形式をとっている。普通、この形式でやるなら切り替わるたびに章を切り分けそうなものだが、シームレスにそれをやってしまう。はじめこそ「××は眠りについた」で次の行