新しい国立競技場の喧噪を見てぼくが思い出すのは、都庁建設時の喧噪だ。今の都庁はぼくが大学生だった25年前に完成したが、完成する前というのは、それはもう世間のバッシングがもの凄かった。バベルの塔になぞらえて「バブルの塔」と呼ばれ、あらゆるメディアがさんざん扱き下ろした。 ところが、それが完成したときの反転ぶりもまた凄まじかった。今度は一転、お祭り騒ぎになったのである。テレビで特集が組まれ、雑誌の表紙を飾り、CMにも登場した。さながら大スターがデビューしたといったような扱いだった。建てられる前のバッシングムードは一掃され、今度は東京の新しいシンボルとして