コロナウィルスは世界的な悪疫ではあるが、エボラ出血熱が流行っているわけではないから、意外とたいしたことはない。インフルエンザより死亡者は多いであろうから、軽々と扱うわけには行かないが、ともかくエボラ出血熱ではない。検査が絞られ、疫学的調査が中心となっているから、いわば魔女狩りのようになっており、不安が増幅している。自分が感染するのが怖いのではなく、他人にうつしたら厄介なのである。これによって、本来なら黙殺するべき他人の愚痴愚痴した感情が、われわれの内部に侵入してくる。不景気による倒産ならいくらでもあるし、普段から黙殺しているのだが、このような世情では他人にいちいち同情しなければならず、この同情がわれわれを蝕んでいる。そもそも気の毒な人というのはルサンチマンの徒であるし、他人を恨んでいる卑しい連中であるから、共感を寄せる筋合いのない相手なのだが、不幸の手紙のようなウィルスが跋扈しているので、