ムンプス後の難聴の発生頻度は、従来 1.5万人に1人程度の極めてまれなものとされていた。しかしこの根拠となる研究ではムンプス患者数を地域の人口の半数1)、あるいは地域の小学生総数の86%2)とした推計値を用いてムンプス難聴と診断された患者数の比率を計算したものであり、決して信頼に足るものではない。前向き調査はわずかにVuori3)が軍人のムンプス患者 298例の聴力を精査した報告のみであり、このうち高度の難聴は1例のみ発見されていた。 小児に対する前向き調査は石丸4)が試みているが、症例数が少なく、3歳以上の 365例のムンプス患者で聴覚スクリーニングを行った中には難聴を認めたものはなかった。 世界的にはムンプスはすでにワクチンの徹底によりほぼ制圧された疾患であり、いまだにムンプス難聴患者が発生し続けている日本の状況が異常なことは、Plotkin5)が述べているとおりである。これまで多くの