「鬼滅の刃」に登場する珍しい名字と同じはんこ。手前はその印影=福岡市東区で2020年10月29日、田鍋公也撮影 竈門(かまど)、我妻(あがつま)、不死川(しなずがわ)、産屋敷(うぶやしき)――。公開中の映画で記録的なヒットを続ける人気漫画「鬼滅の刃」は、登場人物の難しい名字も魅力の一つだ。そんな名前が実在するのか。足は3年前に取材した福岡市東区のはんこ専門店に向かっていた。「日本一の品ぞろえ」でテレビでも話題の「はんのひでしま」。再会のあいさつもそこそこに「鬼滅の」と切り出すと、店主の秀島徹さん(73)は造作なく言った。「あるよ」 創業約90年の老舗。開店当時は店の近くに福岡市へ編入する前の旧箱崎町の役場があり、秀島さんの父が「はんこを忘れた来庁者の助けになれば」と思ったのが始まりだ。秀島さんは高度経済成長期の1970年代に店を継いだ。営業に走り回る保険や車のセールスマンが「この名字の印鑑