「踊るんだよ」羊男は言った。「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ」村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』より。 眠れぬ夜がいくつかあり、奥山貴宏の著作を読み返す日々が続いた。それは同時に「生きるとはどういうことなのか」「世界をリアルに感じるとはどういうことなのか」を考え直す時間だった。奥山の著作は生前に刊行されたものが三冊。まずは二冊の闘病記『31歳ガン漂流』(ポプラ社)と『32歳ガン漂流エヴォリューション』(牧野出版)。そして一冊の小説『ヴァニシングポイント』(マガジンハウス)。本来はこの、ファンの間では『VP』と呼ばれ愛されている小説について書くつもりだった。だけど事情が変わった。それ以前にハッキリさせなければならないことが出来た。正直、こんなことはあまりにあたりまえの話なので書く必要なんて無いと思っていた。だけど世界は想像以上にひどいことになっているらしい。だからハッキリさせる。