尊敬する先輩の異動が決まった。 人事異動が日常茶飯事な我が会社で、数えきれないほどのさよならを経験した。 でも、こんなに悲しい気持ちになったのは初めてだった。 涙をこらえて部内会議をやり過ごしても、業後まではこらえきれず、セブンイレブンでマスクを購入し、帰りの電車内でワンワンと泣いた。 入社以来、一番親身に指導して、応援して、励ましてくれた先輩だった。 そういえば、半年前位に、「こうみくの一番の長所は、その図太さだな」と言われたことがある。 泣き明かした赤い目を擦り、顔を上げると、真っ裸な枝の先々にうずめく桜の芽を見つけた。働き始めてから6回目の春の訪れに気付く。どんなスキルよりも、知識よりも、その図太さこそが、5年間掛けてわたしが手に入れた一番の財産だということを思い出した。そして、それまでは毎日こんな風に泣きじゃくっていた、という昔の記憶も。 社会人になる前のわたしは、絹豆腐状に心がも