広告コミュニケーションが複雑化する中で、求められる本質は、持続する「物語」と記憶に残る「体験」だ—。悩める広告人に向け、現場の経験と言葉で、広告の本質を読み解いた『物語と体験』(宣伝会議 刊)が、全国の書店・オンライン書店で販売されています。本記事では、東急エージェンシーのクリエイティブユニット「TOTB」の河原大助氏が執筆した「第1章 物語」について紹介します。 マスメディアが強力な影響力を持った時代においては、ブランドのつくった「物語」を企業が広告としてつくり、大量に放映し、繰り返し見せることによって、物語を構築することがある程度可能でした。しかし、今日、そのような力技はなかなか通用しません。 一方で、顧客による「推奨」に対する期待は、日に日に高まっています。推奨によるメッセージは、広告よりも信頼性が高く、人々の行動に影響を与えるからです。言う間でもなく推奨は、生身の人間が自分の意思に