幻想や幻覚と一人で 闘った少女時代 実家は大きな種苗業と採種業を営む旧家で、広大な土地や、その頃では珍しい六つもある温室では、毎日大勢の雇い人がスミレや百日草などさまざまな種を採り、日本全国に売っていました。また地元の画家のパトロンになるなど、美術には一定の理解がある家庭でした。 ただ、父の放蕩(ほうとう)のために母はすぐに激し、家の中は不安定で、私はいつも追い詰められるような気持ちで暮らしていたのです。幼い頃から、私は採種場へスケッチブックを持ってよく遊びに行きましたが、ある日スミレ畑で物思いにふけっていると、突然、スミレの一つひとつがまるで人間のようにいっせいに話しかけてくるという体験をします。私にはスミレの花が人間に見え、恐怖で家に逃げ帰りますが、別の日にはまた山並みの稜線(りょうせん)に、輝く光やさまざまなものが見えたりする。 どうしていいか分からない私は、家に飛んで帰って、今見た