「このジャンルのファンは彼のヴィジュアルな豊かさを讃え、評論家は彼のテーマの密度を誉めるが、彼が同時に、たぶん何にもまして真の映画演出家であるということを強調することがあまりにしばしば忘れられているのだ。(…)登場人物たちが字義的意味でリアルではないとしても、彼らはやはりシーンの空間──デッサンによって創造されたものであろうと──のなかに住んでいるのであり、映画表現に特有の手段はやはり監督にとって原材料なのである。本書においてアニメがフレーミングの階梯の変化、カメラの移動、画面の奥行きの作用、モンタージュや音声の作業などを伴った〈ほんとうの映画〉のように扱われていると知っても驚かないでいただきたい。それはずっと前から当然のことなのだ。彼の数多くの才能のなかでも間違いなくもっとも配慮されてこなかったシネアスト宮崎という側面を理解するため、こうした演出がどのように内密に物語の組織化に関与し、か
中公新書が1962年11月以来刊行され、2018年8月で2500冊を突破することになった。筆者は自分なりのこだわりをもって中公新書を蒐集し、(筆者自身が確認する限り)全点所有するに至った。そこで中公新書の蒐集という点から、2500点が刊行された中公新書の魅力について語ってみたい。 まず、なぜ蒐集対象として中公新書を選んだのか、その理由を簡単に述べよう。中公新書は岩波新書、講談社現代新書とともに新書御三家と呼ばれ、内容のバラエティが豊富で、学術と一般の架け橋として日本人の教養を支えてきた。そして中公新書は刊行から56年が経過し、既刊2500冊の中公新書はすべてリスト化され、探書がしやすい点も魅力的である。毎年刊行される目録も、品切れなどの確認のために欠かせないが、特に創刊50周年記念の際に書店にて配布された『中公新書総解説目録』は、増補版や改版の情報も完全に網羅しており、これから中公新書を蒐
──本当にあれでいいんだろうか? 帰路、雨の道央道をレンタカーでひた走りながら、そんな思いが消えなかった。この日、私が行ったのは、今年7月12日に開業したばかりのウポポイ(民族共生象徴空間)である。 ウポポイとはアイヌ語で「(大勢で)歌うこと」を意味する。北海道白老町のポロト湖畔に新設された国立アイヌ民族博物館を核とする「アイヌ文化の復興・発展の拠点」だ。 盛大にオープンした北海道の“目玉施設” 盛んにテレビCMが流れているので、名前くらいは聞いたことがある人も多いだろう。新型コロナ流行の影響で、4月のオープンが7月にズレ込んだものの、今年の北海道にとっては最大の話題のひとつである。 私は中華圏が専門のライターであり、アイヌの知識は通り一遍の範囲にとどまる。ただ、仕事柄、ウイグルやチベットといった中国の少数民族問題に直面することは多い。学生時代の専門分野の関係もあって、先住民や少数民族への
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