高校生の時に取っ組み合いの喧嘩をした。 それまでも何度かそういうことはあったけれども、 一度も勝てたことはなかった。 だけれども、 この時に初めて勝ってしまった。 父に馬乗りになりながら泣いたことをよく覚えている。 エディプスコンプレックスとは、 また違うものなのかもしれないけれども、 父親に対する克服と支配からの脱却、 自分の力でこれからを生きていかなければならないという、 社会不安の芽生えだったのかもしれない。 そこから来る涙、 今振り返ってみるとそう思う。 どちらかといえば口うるさい、 そのくせに家のことは母親に任せきり、 そんな家父長的な父親だった。 だけれどもいつかを境に、 家族に対して気を使うようになった。 リストラからの再就職という大きな挫折を経験している父、 50に近かったのではないだろうか。 そこから畑違いの仕事に就いた。 大黒柱としてのプレッシャー、 そういうものはあっ