義理と人情の世界で生きた忍者たち 忍者がまとめた忍術書のうち、有名なものに『万川集海まんせんしゅうかい』(1676年)がある。その中には、こんな趣旨の記述の数々がある。 忍者は正しい心を持つべきで、正しい心とはすなわち、仁義忠信を守ることである、と。陰謀や騙すことは、忍者としてよろしくない姿であり、私欲のために忍術は使ってはならぬ、そんなのは盗人と同じだ、と。正しい心は忍者本人だけではなく、その妻子や親族もみな持つべきだ、と。そして平素柔和で、義理に厚く、欲が少なく、理学を好んで、行いが正しく、恩を忘れないことが忍びとして必要な要素だ、と。 冷徹な騙し討ちのプロ、というより、清く正しい心とチーム精神を持った人が、忍者の理想像なのだ。 三重大学の国際忍者研究センター副センター長の山田雄司博士は、忍者は時に城の警備員として、時に戦闘員として、また別の時には情報を集めるスパイとして活躍してきたと