著:平田はる香 人は自分が思い描くような人生は、多分生きられないんだろう。 子どものころになりたいものになれる人間は一握りだろうし、多くの人はなりたいものさえ見つからない。子どものころ、将来の夢を聞かれて何度も無理やり書いたけど、ノートの隙間を埋めるために鉛筆を動かしただけで、そこに何の意味もなかったし、そうなりたいと思って書いたことは一度もなかった。 ただこんな田舎にはずっと住むのは嫌だと思っていて、何かがあるだろうと都会に憧れた子ども時代であった。 私は東京生まれ、静岡育ち。 その後また上京して、人生の波に揺られるがまま、今は長野県東御市に住んでいる。これまで生きてきたなかで住む場所を主体的に選んだことはほとんどなく、流されるままに今ここに住み暮らしていると言っても過言ではない。文字通り東御市には流れついたと言っていいと思う。 もともと家や住むこと、暮らしには全く興味がなかった。そうい