1月16日の土曜日、アメリカニュージャージー州のプリンストン大学では、バイオリニスト五嶋みどり氏による公開レッスン(マスター・クラス)が行われました。バイオリンを学んでいる3人の学生が演奏し、これに対して五嶋氏がレッスンをつけるという2時間のプログラムで、私はたまたま見学する機会を得たのですが、「音楽とは何か」という根本の問題に迫る素晴らしいレッスンでした。五嶋氏は独奏者としては世界のトップレベルであるのは間違いありませんが、教育者としても最高の資質を、そして真摯な姿勢を持った方だということを知り、深い感動の余韻が続いています。 サン・サーンスの協奏曲三番の第三楽章を弾いた最初の学生に対して五嶋氏は、まず「この楽章の冒頭部では音楽のディレクション(方向)はどこを向いているのか?」という問い掛けをおこないました。面食らう学生に対して五嶋氏は「第三楽章は第二楽章を受けて始まり、第三楽章という新