二〇二二年の四月一日に、米アマゾンで労働組合が結成された。立ち上げの中心的人物となったのは、元ラッパーのクリスチャン・スモールズ氏。一九九四年の創立以来、無労組経営を貫いてきたアマゾンにとって、初めての出来事だった。アマゾンは組合設立を阻止するためにコンサルティングを雇い、キャンペーンを展開していた。 労働組合の組成の動きは、アマゾンだけの話ではない。ここ二、三年でグーグルやアップルでも労働組合の動きが報道された。シリコンバレーの労使関係は、新たな展開を迎えつつある。 以前のテック企業は労働組合を持っていなかった。そういうものは時代遅れの制度だとさえ思っていただろう。 シリコンバレーに勤める人たちは、みな高待遇で転職しやすい人たちだった。産業の発展とともに彼らの待遇はインフレを続け、高い給与、手厚い福利厚生、遊園地のようなオフィス、そして十分なストックオプションが用意された。 そうした環境