トマ・ピケティ『21世紀の資本』の甘さ マルクスとは異質な発想、ぼやけた資本主義の構造的問題 佐藤優 作家、元外務省主任分析官 世界的規模で大きな話題になっているフランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房)が翻訳し、上梓された。山形浩生、守岡桜、森本正史3氏による訳文がこなれているので読みやすい。 トマ・ピケティ『21世紀の資本』 (みすず書房) 原書がフランス語で、邦訳が英訳からなされていることを批判する人がいるが、このような批判は的外れだ。『21世紀の資本』は、フランス語版オリジナルではなく、英訳がベストセラーになった。世界的規模で現実に影響を与えている英語版から翻訳するというのは正しい姿勢だ。 本書の特徴は2箇所にある。 第1は、比較的簡単な道具立てで、ビッグデータを処理し、過去200年の資本主義が格差を拡大する傾向にあることを実証することである(ただし、二度の