港区・三田にある聖坂(ひじりざか)。この坂もまた、実に走りたくなる坂である……。 某番組のうたい文句はともかく、慶大三田キャンパスから歩いて約5分の場所にある聖坂は、丹下健三氏が設計した在日クウェート大使館や大江宏氏設計の普連土学園と日本有数の名建築が立ち並ぶ。何かと建築にゆかりのある土地にもう一つ、ひときわ目を引く建物がある。 地上に生えてきたかのような構造、コンクリートの不思議な表面。空に向かって鉄筋が伸びるこの建物は、「蟻鱒鳶ル(ありますとんびる)」という。2005年からすでに10年以上に渡って建設が進められ、現在も工事中である。記者が中をのぞくと、作業をしている人を見つけた。蟻鱒鳶ルの施工主、岡啓輔さんだ。 岡さんは元々この場所に自邸を建てるため、土地を購入し自らの手で建築を始めた。三田という場所を選んだ決め手には、都心の土地価格が落ち着きつつあったことや、航空会社に勤めていた奥さ