国会図書館へ足を運んで、文藝春秋発行の『文學界』1961年3月号を閲覧した。約60年前の誌面は既に変色していたが、マイクロフィルムで保管されていたそのページが映し出されたのを見て驚いた。 「謹告」と題されたお詫び文が、何と1ページ大という異例の大きさで掲載されていたからだ。誌面から当時の編集者の苦渋がにじみ出ていた。同じ編集者として重たい気持ちになった。 その一文の最後はこう結ばれていた。 《虚構であるとはいえ、その根拠になった山口氏及び防共挺身隊、全アジア反共青年連盟並びに関係団体に御迷惑を与えたことは卒直に認め深くお詫びする次第である。 昭和三十六年一月二十日 文學界編集長 小林米紀》 お詫びをしたのは同誌前号2月号の大江健三郎さんの小説「政治少年死す」についてだった。1月号に掲載された小説「セブンティーン」の第2部として掲載されたものだ。 1960年10月に日比