「Jポップの歌詞、翼広げ過ぎだろ」「瞳閉じ過ぎじゃね?」――。Jポップ歌詞の「劣化」が叫ばれるようになって久しい。音楽通のele-king読者であれば、「その通り!」と相づちを打ちたくなるところかもしれない。ところが、本書の編著者・磯部涼は、そんな見方に疑問を呈する。 「決して最近の歌詞がつまらなくなったわけではなく、社会のリアリティが変容するとともに、歌詞が持つリアリティも変容し、ついていけなくなった人がいるにすぎないのではないか」 そう、歌詞は劣化などしていない。演歌や歌謡曲の全盛期から、陳腐な歌詞やストレートな表現はいくらでもあった。むしろ変わったのは、つくり手よりも受け手の意識だ。 芸人マキタスポーツの言葉を借りれば、いまや世は「1億総ツッコミ時代」である。ネットの普及で誰もが気軽に批評を発表できるようになり、ツッコミや批判が可視化されやすくなった。難しい音楽理論はわからないという